低用量ピルをきちんと正しく内服しているときの妊娠率は0.6%とされており、その確率は非常に低いものです。しかし、注意事項を守って正しく内服できていない場合、飲み忘れを含め、一般的に使用しているケースになると、妊娠率は8%まで上昇します。つまり、低用量ピルを内服していたとしても、100%避妊が成功するわけではないのです。
このページの監修医師
上野駅前婦人科クリニック 院長
杉浦由紀子
2011年東海大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医として、都立病院の産婦人科やレディースクリニックの経験を経て、2023年6月16日に上野駅前婦人科クリニックを新規開院。
目次
ピル服用中の妊娠【4つの失敗例】
低用量ピルの避妊確率は、理想的な使用で99.4%と非常に高いものです。しかし、服用方法を間違えると、ピルの効果が得られないケースがあります。
では、低用量ピルを飲んでいたのに、妊娠してしまった実際の失敗例を4つご紹介します。
失敗例1:ピルの飲み方を間違えていた
1つ目は、ピルの飲み方を間違ってしまったケースです。飲み間違いには、下記のような例が挙げられます。
① 飲む順番を間違えた
一相性のピルの場合、ホルモンが含まれる実薬であれば、どの錠剤も同じホルモン量なので問題ないのですが、三相性の場合、実薬のホルモン量が異なるため、内服時には注意が必要です。また、偽薬を間違った順番で内服したときも、十分な避妊効果が得られなくなります。
② 飲み忘れてしまった
最後の服用から24時間以上48時間未満であれば、気づいたときにすぐに内服し、翌日からも通常と同様に1日1回1錠内服していただきます。しかし、最後の内服から48時間以上経過しているときは、医師の指示に従った対処法を取らねばならず、十分な避妊効果が得られません。また、飲み忘れやズレがあると、十分な避妊効果が得られない可能性がありますので、コンドームなどで避妊するようにしてください。
失敗例2:効果が得られる前に着床していた
2つ目は、ピルのホルモン剤による避妊効果が十分ではない時期に性交を行ってしまい、受精卵が着床してしまっているケースです。
低用量ピルの飲み始めは、月経初日から遅くとも月経5日目までに飲み始めるのが良いとされています。その後、7日間連続して飲むまでは、避妊効果が得られないため、別の避妊法を行う必要があります。この期間中にコンドームを装着しない性行為を行った場合、避妊をしていないため、妊娠する可能性が高いというわけです。
失敗例2:効果が得られる前に着床していた
3つ目は、飲み合わせの関係で、避妊効果が十分でないケースです。低用量ピルの効果を減弱させる薬剤やサプリメントがあり、それらを服用したまま、低用量ピルを飲んでいると、十分な避妊効果が得られず、妊娠してしまいます。ピルの効果を弱める薬や成分は、下記のとおりです。
- ・テトラサイクリン系、ペニシリン系の抗生物質
- ・バルビツール酸系、ヒダントイン系の抗てんかん薬
- ・モダフィニルなどの精神刺激薬
- ・リファンピシン、リファブチンなどの抗結核薬
- ・HIVプロテアーゼ阻害薬、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬などの抗HIV薬
- ・セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)を含むサプリメント
- ・チェストベリー、チェストツリーを含むサプリメント
上記の薬剤、サプリメントを服用されている方は、低用量ピルを処方してもらう医療機関で、必ず医師に相談するようにしてください。
失敗例4:下痢や嘔吐が続いていた
4つ目は、胃腸炎などで下痢や嘔吐が続いていたケースが挙げられます。
嘔吐や下痢が続いてしまうと、薬剤の有効成分が身体に行き渡らないまま、体外に排出されてしまい、得られるはずの避妊効果が十分でなくなる可能性が高まります。
消化器系の不調があり、嘔吐などが続く場合は、自己判断することなく、医師に相談すると安全です。
ピル服用中に妊娠が疑われるときの症状
低用量ピルを内服中に妊娠した場合に現れる症状は、休薬期間中に起こるはずの出血が1週間以上起こらない、着床出血のような少量で短期間の不正出血があることなどが挙げられます。いずれにせよ、身体の異変に変わりはないので、不安がある方は、婦人科受診をおすすめします。
また、低用量ピルの飲み始めに、妊娠初期の“つわり”によく似た症状が現れることがあり、この症状を「妊娠した!」と間違える方がいます。
- ・吐き気
- ・胃部のムカつき
- ・むくみ
- ・乳房の張り、痛み
- ・不正出血
- ・頭痛
これらは、低用量ピルに身体が慣れていないために起こる一時的な副作用です。ピルに身体が慣れてくる4~5日程度で改善していくので、ご安心ください。
ピル服用中に妊娠したかも?と思ったときの対処法
休薬期間に出血がない、不正出血があるなど、不安な症状がある場合は医師に相談する前に、ご自身で妊娠検査薬を使用してみるのも一つの手段です。
妊娠検査薬は、ピルの内服をしている期間でも使用できます。思い当たる性行為のあと、3週間以降の検査で正しい結果が得られます。
妊娠検査薬の結果が陽性のとき
妊娠検査薬は非常に精度が高いものですが、本当に妊娠しているのか、また、妊娠週数の確認をするためにも、婦人科受診をする必要があります。出産・中絶どちらを選ぶにしても、正確な妊娠週数の確認が求められているからです。上野駅前婦人科クリニックは、妊娠週数の確認ができる医療機関ですので、検査薬で陽性がわかった方は、まずは当クリニックにご相談ください。
妊娠検査薬の結果が陰性のとき
ピルの内服中は出血がないということが起こりえます。妊娠検査薬を使用して陰性であれば、様子を見ていただく場合が多いですが、二か月以上出血が無い場合は受診するようにしてください。
服用中に妊娠したら胎児はどうなるの?
「低用量ピルを内服しているときに妊娠したら、お腹の赤ちゃんへの影響が心配」と思う方は多いです。しかし、ピルの内服中や妊娠前の内服があっても、胎児の先天異常のリスク増大は認められないと研究機関が発表しています。
ピル服用中の妊娠を防ぐためにできること
低用量ピルの妊娠率は、理想的な使用によって「0.6%」、一般的な使用によって「8%」と避妊できる可能性が100%ではありません。望まぬ妊娠を防ぐためにも、コンドームを併用することが求められています。
ピルを内服中の方は、避妊ができているからと、コンドームを着用せずに性行為をしてしまう傾向があります。しかし、ピルに性感染症を防ぐ効果はありません。性感染症は、自覚症状が出にくく、発見が遅れがちな疾患であり、放置すると不妊症などの重大なトラブルに発展する可能性があります。避妊は心配ないと思っても、性感染症予防のため、性交時は必ずコンドームを着用しましょう。
ピル服用中に妊娠したかも?と思ったら…
ピルの服用中に妊娠する可能性は、ゼロではありません。もし、不安な症状や心配事がある際は、婦人科を受診するといいでしょう。本当に妊娠しているかが分かるだけでなく、異常がある場合は、速やかに対応してもらえます。
上野駅前婦人科クリニックは、低用量ピルの処方、妊娠の確認、婦人科疾患の診察などに対応しているレディースクリニックです。プライバシーに配慮した快適空間をご用意し、患者様お一人お一人に向き合っています。まずは、お気軽にご相談ください。
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