子宮内膜症 endometriosis

子宮内膜症の原因は性行為のやりすぎ?検査と治療法

子宮内膜症の原因はやりすぎ?

子宮内膜症の発症は、性行為の回数と関係ありません。子宮内膜症の原因は、月経血が体外に排出されず、お腹の中(骨盤内)に逆流する「月経逆流説」が有力とされています。

この記事では、月経のある女性(初潮~閉経)の10人に1人が発症する子宮内膜について解説します。

このページの監修医師

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上野駅前婦人科クリニック 院長 
杉浦由紀子

2011年東海大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医として、都立病院の産婦人科やレディースクリニックの経験を経て、2023年6月16日に上野駅前婦人科クリニックを新規開院。

目次

子宮内膜症の原因は性行為のやりすぎではない

子宮内膜症の原因は性行為のやりすぎではなく、「月経逆流説」が主な原因とされています。この説は、経血が体外に排出しきれず、骨盤内に逆流してしまい、経血内に存在する子宮内膜組織が子宮以外の場所で増殖してしまう状態を指します。

経血の逆流と聞くと、月経中の性行為が原因で逆流が起こるのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、逆流は性行為の有無に関係なく、女性の80~90%で見られる生理的な現象です。よって、月経中の性行為が経血の逆流を引き起こすわけではありません。

月経血の大部分は、腟を通じて体外に排出されますが、一部は卵管を通じて、お腹の中(骨盤内)に逆流します。月経血中に存在する剥脱した子宮内膜組織や細胞が、この逆流月経血とともに骨盤内に運ばれ、骨盤内の臓器や組織に付着し育つことで、子宮内膜症になると言われています。(中略)その他にも化生説、転移説、幹細胞説などがあります。一つの説だけで、子宮内膜症の全てを説明することは出来ません。 引用:日本内分泌学会

子宮内膜症とは?

子宮内膜症とは、子宮内膜またはそれに似た組織が、子宮の内側以外の場所に発生して増殖する疾患です。月経時の子宮内膜同様、組織が増殖して剥離を繰り返しますが、剥離しても排出する出口がなく、その場に溜まり続けて、炎症や癒着を引き起こします。

子宮内膜症を発症すると、下腹部や腰をはじめとしたさまざまな箇所の痛みを引き起こすほか、不妊になったり、頻度は低いですががんに移行したりする可能性もゼロではありません。~30代で発症するケースが多く、女性全体での発生率は約10%、つまり10人に1人とされています。

参考:日本産科婦人科学会|子宮内膜症

子宮内膜症はどこにできる?発症部位を図解

子宮内膜症は、卵巣、ダグラス窩(だぐらすか/子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい/子宮頸部を仙骨に連結させる支持組織)、卵管や膀胱子宮窩(ぼうこうしきゅうか)などに多く発症します。稀に、腸や肺にも発症し、それぞれの場所で子宮内膜と同様に組織の増殖を繰り返します。

子宮内膜の組織が、卵巣にできたものを卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)と呼び、大きくなった嚢胞が破裂すると骨盤内で腹膜炎を起こし、激しい痛みを生じさせます。また、チョコレート嚢胞は放置するとがん化する可能性があり、その確率は0.72%です。

子宮内膜症症状セルフチェックリスト

  • □強い月経痛がある
  • □月経期間でないのに腰や下腹部が痛む
  • □性交痛がある
  • □妊活をしているのに妊娠しない
  • □経血量が多く、短時間の間に何度もナプキンを取り替える
  • □風邪ではないのに微熱がある
  • □排便時に肛門に痛みがある
  • □頭痛、吐き気が続いている
  • □不正出血を繰り返す
  • □下痢もしくは便秘気味
  • □1日の尿の回数が増えてきた

チェック項目が多かった方は、子宮内膜症の可能性が高いといえます。早期治療につなげるためにも、早めに検査を受けることをおすすめします。上野駅前婦人科クリニックで、子宮内膜症の検査が可能です。ご不安がある方は、お気軽にご相談ください。

初期症状は月経時の痛み

子宮内膜症の初期症状は、月経時の下腹部や腰の痛みです。子宮内膜症でない方も、月経時に痛みを感じることは多くありますが、子宮内膜症の場合は寝込んでしまうほどの強い痛みがあったり、月経の度に痛みが強まったりします。また、月経期間を終えても痛みが継続するケースもあります。

子宮内膜症を早期発見するポイントは、月経の度に悪化する月経痛や、経血量の増加です。また、妊活を行っているにもかかわらず妊娠できずに悩んでいる方も、婦人科で子宮内膜症の検査を行うことをおすすめします。

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子宮内膜症の4つのステージ

子宮内膜症の4つのステージ

子宮内膜症は、病症の進行度によっていくつかの分類法に分けられています。以下ではその中の一つであるビーチャム(Beecham)の分類より、4つのステージごとの病症について説明します。

参考:日本産婦人科医会|No.102子宮内膜症・子宮腺筋症(2)分類

ステージ1

1~2mm程度の子宮内膜組織が、血の固まり(血腫)となって骨盤内の臓器やそれを覆う薄い膜に点在している状態です。この段階では自覚症状がほぼなく、発見は困難です。

ステージ2

点在していた子宮内膜組織が、仙骨子宮靭帯(仙骨と子宮をつなぐ組織)、広靭帯、子宮頸部の後ろあたり、または卵巣で大きくなっている状態です。まだ癒着はしていないものの、月経痛の悪化、経血量の増加などの症状が起こります。

ステージ3

卵巣が通常よりも少なくとも2倍以上大きくなり、仙骨子宮靭帯、子宮後壁直腸、卵管と卵巣に子宮内膜組織が癒着している状態です。癒着とは、本来離れているはずの臓器や組織が、炎症のためにくっついてしまうことを指し、癒着によって、子宮の移動も制限されてしまいます。

ステージ4

ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)が閉鎖し、骨盤内の臓器が癒着のために一つの塊のようになっている状態です。個々の臓器が区別できないほど、周囲組織と強い癒着が起こっており「凍結骨盤(frozen pelvis)」と呼ばれることもあります。日常生活に支障が出るような強い痛みが生じます。

子宮内膜症を放置するとどうなるの?

子宮内膜症を治療せずに放置していると、子宮内膜に似た組織の癒着が卵管、卵巣、子宮だけでなく膀胱、直腸、小腸に広がり、強い痛みを引き起こします。癒着は肺まで広がることもあるため、早期発見・治療が大切です。

また、卵巣内に血液が溜まる卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)を発症すると、0.7%の確率でがん化するリスクもあります。子宮内膜症が疑われる場合は放置せず、婦人科のある医療機関を受診しましょう。

子宮内膜症の検査・治療方法

子宮内膜症で婦人科を受診する際に行われる、一般的な検査・治療方法をご紹介します。

検査方法

  • ・診察
  • ・内診
  • ・血液検査
  • ・超音波検査(エコー検査)
  • ・MRI検査

※上野駅前婦人科クリニックで検査を行い、MRI検査が必要と判断された場合は、専門の施設をご紹介いたします

子宮内膜症の検査は、主に経膣超音波検査(エコー検査)で行います。超音波検査で膣に挿入する検査機器のプローブ(探触子)は、細長い棒状で親指程度の太さです。先が丸く、お痛みがほとんどない検査のため、ご安心ください。

治療方法

  • ・対症療法
  • ・内分泌療法(ピル等)
  • ・手術療法

子宮内膜症の治療方法には、性抗炎症薬や鎮痛剤で症状を緩和させる「対症療法」、ピルをはじめとしたホルモン剤で病巣を小さくする「内分泌療法」、外科手術によって病巣の剥離や摘出を行う「手術療法」があります。

治療方法は、目的、病巣部位、年齢、今後の出産を希望しているかどうかなど、患者様のライフステージ全体を考慮して選択を行う必要があります。

上野駅前婦人科クリニックでは、低用量ピルによる内分泌療法、ピルの服用に抵抗がある方には漢方などを用いた対症療法を行っています。低用量ピルについてくわしくは、低用量ピルのページをご参照ください。

子宮内膜症かも?と思ったら上野駅前婦人科クリニックへ

子宮内膜症は、月経がある女性の10人に1人の割合で起こる珍しくない疾患です。初期症状が痛みや経血量の増加のため、「たまたま生理が重かっただけ」と発症を見過ごしてしまう方も少なくありません。月経の度に症状が重くなったり、月経期間でないにもかかわらず痛みが続いたりしている場合は、子宮内膜症の疑いがあります。少しでも思い当たる症状があったら、積極的に検査を受けましょう。

上野駅前婦人科クリニックで検査を行い、子宮内膜症と診断された場合は、内服薬で治療が可能です。子宮内膜症ではなかった場合も、月経に関するトラブルで悩まれている患者様には、ライフスタイルに合わせた最適な治療をご提案いたします。ご不安がある方は、まずは当クリニックにご相談ください。

子宮内膜症のよくあるご質問

子宮内膜症と診断されましたが、性行為に影響はありますか?
A.子宮内膜症を理由に性行為が禁止されるわけではありません。しかし、子宮内膜症の症状の一つに性交痛があります。性行為中に痛みが生じたり、体調が優れなかったりする場合は治療を優先するため、医師の指示に従いましょう。性行為の可否は、医師の判断に従ってください。
子宮内膜症の原因にはストレスも含まれますか?
A.精神的・身体的なストレスは、子宮内膜症の直接の原因ではありません。しかし、ストレスによって女性ホルモンの分泌に乱れが生じ、ホルモンバランスが崩れると、子宮内膜症の症状の進行・増悪を促す可能性があります。
子宮内膜症の治療に低用量ピルが用いられますか?
A.はい。子宮内膜症の治療に、低用量ピルが用いられるケースもあります。内分泌療法には、LEP製剤、ジエノゲスト、ジドロゲステロン、LNG-IUS、GnRHアゴニストなどを用いるのが一般的です。どの薬剤を用いるかは、患者様の病期、症状、ライフステージなど、さまざまな要因を考慮したうえで、決定されます。
子宮内膜症が重症化するとどんな症状が現れますか?
A.子宮内膜症が重症化すると、月経時以外でも下腹部痛や腰痛が現れるほか、性交痛、排便時の肛門の痛みが生じ、日常生活に支障をきたす場合があります。治療が遅くなればなるほど、薬の服用のみで症状の改善が難しくなっていくため、子宮内膜症と診断されたら、医師の指示に従って、適切な治療を受けましょう。
子宮内膜症で不妊になる割合はどれくらいですか?妊娠できるか不安です。
A.日本産婦人科医会によれば、子宮内膜症患者の30~50%が不妊とされています。しかし、子宮内膜症と診断されても、軽度であれば自然妊娠できる可能性があります。病状が進行すると妊娠できる確率も下がっていくため、早期発見と治療が大切です。 (参考:日本産科婦人科学会|子宮内膜症

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