
自然流産は全妊娠の約15%で起こる、比較的多い症例です。
日本産婦人科学会によると妊娠経験のある女性の約40%は流産を経験しているとの報告があります。多くの女性が経験する流産ですが、流産とはどのようなものでどんな処置をするのか、分からないことも多いのではないでしょうか?流産手術の実際やその後の生活について、分かりやすく解説していきます。
参考URL:日本産科婦人科学会|流産・切迫流産
このページの監修医師

上野駅前婦人科クリニック 院長
杉浦由紀子
2011年東海大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医として、都立病院の産婦人科やレディースクリニックの経験を経て、2023年6月16日に上野駅前婦人科クリニックを新規開院。
目次
流産とは?
妊娠したにもかかわらず、妊娠の早い時期に胎児が亡くなることを流産といいます。妊娠22週より前に妊娠が終わることは、全て「流産」です。流産の約85%は、妊娠12週までに起こるとされています。
自然排出と流産手術
流産と診断されると、流産手術をするか自然排出を待つかの2択となります。以前までは、流産手術(子宮内容除去術)を行うことが一般的でした。流産の中には多量出血や後遺症につながるものがあり、現在と違って診断が難しかったことから、一律に手術対応としていました。しかし、待つことで自然に排出するものもあり、手術を行わないケースもあります。
自然排出と流産手術は具体的にどのようなものなのか、各々のメリット・デメリットも含めて解説しています。
1.自然排出
妊娠に伴う組織は、出血から早くて1〜2日、遅くとも2週間ほどで自然に子宮から排出されていきます。
自然排出は、手術をせずに定期的な受診(1~2週間ごと)と超音波検査で子宮内の状態を確認しながら、胎のうが自然に排出されるのを待ちます。これは、待機的管理法ともいいます。
排出が不完全な場合には、大量出血や細菌感染を防ぐため、流産手術と同じ処置が必要になる場合があります。
ほとんどの場合は、通常の月経時よりやや強い痛みと多めの出血程度ですが、特に週数が進んでからの場合は、子宮内容物排出の際に大量の出血が起きたり、激しい痛みを伴ったりすることもあります。
メリット | デメリット |
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メリット
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デメリット
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2.流産手術
流産手術とは、吸引法で子宮内容物を取り除く方法です。静脈から麻酔薬を投与し、眠っている間に手術が終了するので痛みの心配はありません。手術時間はおよそ15〜30分程度です。
手術後意識はすぐに回復するので、術後の合併症や異常所見の有無を観察した後に、日帰りでご帰宅となります。
なお、流産手術の場合も、自然排出の場合でも、感染症の発症率に差はなかったという研究報告があります。
メリット | デメリット |
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メリット
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デメリット
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どちらを選べば良い?
自然排出と流産手術について説明しましたが、では、どのように選択したらよいのでしょうか。
実際は患者様のお身体の状態、自然排出と流産手術それぞれのメリット・デメリットを説明させていただき、患者様のご希望を尊重させていただきます。
しかし、医学的な適用やその後の経過を考えた結果、流産手術をお勧めすることが多いです。
当クリニックの流産手術の方法
当クリニックでは、妊娠11週までの初期流産であり、不全流産や稽留流産の場合に「子宮内容除去術」を受けていただきます。妊娠12〜22週までは、通常の出産と同様の方法を採用するケースがあり、当クリニックでは対応できかねますので、ご了承ください。
流産の主な種類5つ
流産には、時期や状態、進行具合によってさまざまな分類法・呼び名があります。主な5つについて見ていきましょう。
1.進行流産
進行流産とは、出血が始まって子宮内容物が子宮の外に出てきている状態をいいます。子宮口が開き、月経よりも多い出血が見られたり、陣痛のような下腹部痛が生じたりします。
進行具合によって下記のように「完全流産」と「不全流産」に分けられます。
2.不全流産
子宮内容物の排出が始まっているが、子宮内に一部組織を残している状態を不全流産といいます。多くの場合持続して出血が続いていることが多く、子宮内容除去手術を行う場合が多いです。
3.完全流産
子宮内容物がすべて子宮外に自然に出てしまった状態をいいます。出血や腹痛等は治まってきている場合が多く、経過観察または子宮収縮剤投与を追加して対処することがほとんどです。
4.稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
稽留流産とは、亡くなった胎児が子宮内にまだ残っている状態をいいます。母体に腹痛や出血などの自覚症状がないことも多く、医療機関の診察時に初めて確認されることが多いです。子宮内容除去手術を行う場合と、自然排出を試みる場合があります。
5.化学流産
尿や血液を用いて妊娠反応は出たものの、病院で検査をする前、つまり非常に早い時期に流産してしまった状態をいいます。妊娠検査薬が薬局やドラッグストア等で販売され、妊娠反応が広く一般に検査できるようになったことで生まれた病態です。妊娠とは思わず、月経として過ごされる方も少なくありません。特に治療は必要なく、経過観察を行います。
化学流産は、子宮内に胎のうが確認される前なので、流産の回数に含まれないと定義されています。化学的流産、もしくは化学妊娠や生化学的妊娠と呼ばれることがありますが、いずれも同義語です。
流産後の生理はいつから?
個人差があるため一概には言えませんが、流産後1カ月半〜2カ月ほどで月経が再開します。月経開始前でも、妊娠の可能性はあるので、妊娠を望まないのであれば、必ず避妊を行ってください。
流産してもご自身を責めないで…
早期流産の原因のほとんどは、赤ちゃんの遺伝性疾患、先天性異常であるといわれています。妊娠に気づかない間の飲酒、喫煙、薬の内服や、仕事や運動など、お母さんの行動によるものではありません。今回の妊娠で流産してしまっても、ご自身を責めないで、次の機会を待ちましょう。
流産絨毛染色体検査(POC検査)
|流産を繰り返さないために
POC検査とは、早期流産後の絨毛(じゅうもう)・胎児組織(POC:product of conception)に対して行う染色体検査です。POC検査は、今後の妊娠計画に役立つ重要な情報がわかるので、“流産を繰り返したくない”方にとって非常に意義のある検査として注目されています。
検体として使用する「絨毛」は胎盤を構成する組織の1つで、酸素や栄養の交換などの役割があります。胎児と同じDNAを持つため、この絨毛を検査すると、胎児の染色体異常の有無が判別できるという仕組みです。
POC検査で絨毛の染色体に異常が認められれば、胎児側の要因である可能性が高くなります。つまり、今回の流産が胎児側の要因か、母体側の要因で起こったのかが高い可能性で確認できるということです。 実際、早期流産のPOC検査では60%から80%の確率で、何らかの染色体異常が見られるという報告もあります。
参考:日本産婦人科医会「流死産絨毛・胎児組織(POC:product of conception)染色体検査 (POC 検査)」
POC検査の方法
POC検査は、以下の手順で実施します。
- 1.検体の採取
流産手術で採取した子宮内容物から、胎盤絨毛組織や胎児組織を選別して採取します。この際、母体の血液などが付着していると正確な検査結果が得られないため、慎重に母体組織を取り除きます。 - 2.検体の輸送
検体に適した保存状態で、検査施設に輸送します。 - 3.検査の実施
高精度な検査機器を用いて、染色体に関する検査を行います。 - 4.結果報告
分析した検査結果を患者様にご説明します。検査結果が出るまで2~3週間かかります。あらかじめご了承ください。
POC検査を受けるときの注意点
POC検査は非常にデリケートな検査です。さまざまな要因により、思うような結果が得られず検査失敗となることが2~10%程度起こります。
また、万が一、結果に異常があった場合には、臨床遺伝専門医の在籍する医療機関へのご紹介となります。こちら併せて、ご理解・ご了承ください。
流産手術とPOC検査の料金
上野駅前婦人科クリニックでは、流産手術を保険適用で行う医療機関です。お身体に優しいMVA法という手術方法で行っています。
流産手術(MVA法) | 約20,000円 |
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※手術代のほかに、診察料・検査料などがかかります
POC検査(G分染法)は当クリニックで流産手術を受けられた方が対象です。他院で流産手術を受けられた方や当クリニックで流産手術を受けられた後、ご自宅で子宮内容物の排出があった方は、POC検査(NGS染色体検査)のみの適応となります。また、POC検査は保険適用外の検査です。あらかじめご了承ください。
POC検査 (G分染法) |
75,000円 |
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POC検査 (NGS染色体検査) |
80,000円 |
※上記とは別に、診察代やお薬代などがかかるケースがあります
流産手術に関するよくあるご質問
- 流産手術後の安静期間はどのくらいですか?
- A.流産手術後は、頭痛・頭重感・めまい・肩こり・下腹部の張り・イライラなどの症状が出やすいので無理をしないようにしましょう。3日間程度は、安静に過ごすようにしてください。
- 流産手術後の痛みはどのくらいですか?
- A.流産手術後に、子宮が収縮することで月経痛のような痛みが生じます。鎮痛剤を服用して抑えることが可能です。手術後の痛みが不安な場合には、医師にご相談ください。
- 流産手術後の出血はいつまで続きますか?
- A.手術後1〜4週間は、不正出血が見られることがあります。それ以上に出血が続く場合や、出血量が多い場合には、再度来院していただくこともあります。まずは電話にてご相談ください。
- 流産手術後、仕事はいつからできますか?
- A.3日ほどの安静期間後、仕事や外出などの日常生活は無理のない程度に、これまで同様に生活していただけます。
- 流産手術をすると、不妊症になりますか?
- A.流産手術後でも、すぐに妊娠することは可能です。流産手術が、不妊症の原因となる根拠はなく、流産手術を経験しても、安心して妊娠を計画できます。心身ともに回復したら、次の妊娠を見据え、計画するといいでしょう。
- 他院で流産手術を受けるのですが、上野駅前婦人科クリニックでPOC検査を受けられますか?
- A.はい、受けられます。他院で流産手術を受ける予定の方も当クリニックでPOC検査(NGS染色体検査)が可能です。ご提出いただく検体の保存方法や提出の仕方など、検査に必要な注意事項がありますので、必ずお問い合わせください。
- POC検査は保険適用ですか?
- A.いいえ、当クリニックでのPOC検査は保険適用外のため、全額患者様の自己負担です。保険適用でPOC検査を行っている医療機関もありますが、適用となるのは2回目の流産からという条件があります。初めての流産でPOC検査をご希望の方は、1回目での流産でも検査可能な当クリニックにご相談ください。
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2023/8/16
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