正常な月経は周期が25~38日、持続期間が3~7日、経血量が20~140mlとされています。 月経不順(生理不順)はホルモンバランスの乱れのほか、疾患が隠れている可能性があるため、早期の原因解明が大切です。
ここでは、月経不順の原因のほか、改善方法や妊娠について解説します。
このページの監修医師
上野駅前婦人科クリニック 院長
杉浦由紀子
2011年東海大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医として、都立病院の産婦人科やレディースクリニックの経験を経て、2023年6月16日に上野駅前婦人科クリニックを新規開院。
目次
生理不順(月経不順)とは?
月経不順(生理不順)は、前の月経が始まってから24日以内に次の月経が始まる、もしくは39日以上経っているのに次の月経がこない状態を指します。また、月経期間が著しく短い(2日以内)、もしくは8日以上ダラダラと続く場合も月経不順とされています。
月経周期は年齢や生活リズムによって変化するため、毎月まったく同じ日数にはなりません。そのため月経不順の自己判断は難しいですが、月経の正常周期25~38日、正常期間3~7日を目安にするとよいでしょう。月経周期や期間に異常がある場合は、早めにクリニックを受診しましょう。
生理不順の原因
月経不順を引き起こす原因はさまざまですが、そのほとんどを占めるのがホルモンバランスの乱れです。ホルモンの分泌には「脳視床下部」「脳下垂体」「卵巣」の3つの器官が複雑に関係し合っています。
この中でも、視床下部は自律神経や内分泌をコントロールする部位であり、大きな心身のストレスを受けた場合は、ストレス状態を防御しきれなくなり、結果的に月経不順につながります。
視床下部(ししょうかぶ) |
卵巣が分泌したホルモン量を把握して、脳下垂体に性腺刺激ホルモン放出ホルモンを分泌 |
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脳下垂体(のうかすいたい) |
視床下部のホルモン放出の司令を受けて、卵巣に向けて性腺刺激ホルモンを分泌 |
卵巣 |
性腺刺激ホルモンを受けて卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌させる |
月経不順になりやすい方
以下の項目に多く当てはまる方は、月経不順になりやすいため注意が必要です。
- ・短期間に5kg以上の体重の増減があった
- ・BMI18.5以下、もしくは体脂肪率が17%以下
- ・環境に大きな変化があった
- ・人間関係でトラブルを抱えている
- ・栄養バランスに偏りがある
- ・寝不足もしくは睡眠の質が悪くて寝た気がしない
- ・出産直後、もしくは授乳中である
- ・ハードな運動やトレーニングを継続している
- ・入浴をシャワーのみで済ませている
生理不順の種類とセルフチェック
月経不順は、症状によって名称が付けられています。以下の状態にお心あたりのある方は、上野駅前婦人科クリニックにご相談ください。
不整周期月経 |
月経周期が安定せず、周期が24日以内だったり39日以上だったりする状態です。25日以上38日以内のバラつきであれば大きな心配は不要です。生活習慣の見直しで改善する場合もあります。 |
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無月経 |
妊娠をしていないのに、3カ月以上月経がない状態です。婦人科系の疾患やホルモン異常などが原因として考えられ、放置すると不妊のリスクが高まるため、早めにクリニックを受診しましょう。 |
頻発月経 |
月経周期が24日以内よりも短い状態です。「月に2回、生理がくる」と違和感を覚える患者さんも多くいらっしゃいます。月経と月経との中間期に起こる排卵出血を月経と勘違いしてしまいがちですが、排卵出血は月経と比べて出血量が少なく2~3日で止まる点が特徴です。 また、初経を迎えたばかりの10代や、閉経直前に起こるケースもありますが、そういった方は強い痛みを伴わない場合はすぐに治療する必要はありません。 |
稀発月経 |
月経周期が39日以上の状態です。基礎体温の計測から、定期的な排卵が認められれば、緊急性は低いですが、排卵を伴わない場合は不妊につながる可能性もあります。将来、妊娠を希望する方は、早めに医師の診察が必要です。 |
過短・過少月経 |
月経期間が2日以内で終わる状態を「過短月経」、経血の量が著しく少ない(20mL以下)状態を「過少月経」といいます。ピルの服用やミレーナ装着など、ホルモン治療による月経期間の短縮、経血量の低下は問題ありませんが、それ以外の場合は受診が必要です。 |
過長・過多月経 |
月経期間が8日以上続く状態を「過長月経」、経血の量が著しく多い状態を「過多月経」といいます。経血量が多いため貧血になりやすく、疲れやすさやめまいを伴う方も少なくありません。 経血量を測ることは難しいですが、塊のような経血が連続して排出される、昼でも夜用ナプキンでないと間に合わないなどの場合は、「過多月経」の可能性が高いといえます。 |
生理がこない理由
月経がこない主な理由には、下記の原因が挙げられます。
妊娠 |
妊娠が成立すると、受精卵のベッドの役割を担う子宮内膜を外に排出する必要がなくなり、月経がストップします。稀に受精卵が子宮内膜に着床する際、出血が起こることがありますが、その際の出血量は月経時よりも少なく、ピンクや茶色のおりものであるケースもあります。妊娠の可能性がある場合は、妊娠検査薬で妊娠の有無を確かめましょう。 |
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早期閉経 |
早期閉経は早発卵巣不全とも呼ばれ、40歳より前に卵巣機能が低下して無月経が続く状態を指します。永久に月経が止まる早発閉経と、少ないながらも稀に月経や排卵が起こる2種類がありますが、両者の見分けは困難とされています。排卵がないため妊娠が難しく、ホルモン分泌能力の衰えで、更年期障害に似た症状が出るケースもあります。 |
甲状腺疾患 |
甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌して新陳代謝や細胞の成長を促す働きを持つ器官です。甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病、甲状腺腫瘍など)にかかると月経不順や月経異常を引き起こし、妊娠中の場合は流産・早産を引き起こすため治療が必要です。 |
ストレスや過度な運動 |
家庭・職場・学校など環境の変化や、悩み事、トラブルなどのストレスを抱えると、ホルモン分泌の司令を出す視床下部の働きが弱まり、月経不順を引き起こします。 過度な運動も、消費カロリーが大幅に摂取カロリーを上回り、身体や脳が生命の危険を感じて月経を止めてしまいます。月経不順の改善に適度な運動は有効ですが、疲労困憊してしまうほどの過度な運動の継続は控えましょう。 |
体重の急激な変化 |
短期間内に体重の大幅な増減があると、ホルモン分泌を司る器官が身体の変化に対応しきれず、ホルモンのバランスが崩れて月経不順を引き起こします。ほとんどが体重を元に戻す、もしくは標準に寄せることで月経が再開しますが、それでも月経不順が継続する場合はクリニックに相談しましょう。 |
子宮奇形 |
18歳になっても初経を迎えていない、正常通り来ていた月経が急に止まった、などの場合は子宮奇形の可能性も考えられます。子宮奇形はほとんどが先天的のもので、種類と程度によっては妊娠と出産が困難なケースもあります。奇形のほとんどは手術によって改善します。 |
生理不順だと妊娠しにくくなる?
妊娠に重要なのは、月経周期や経血量よりも排卵が正常に行われていかどうかです。月経不順があり妊娠を希望している場合は、まず基礎体温を記録して排卵の有無をチェックしましょう。基礎体温が低温相と高温相の二相に分かれていれば、排卵の可能性は高いといえます。
3カ月ほど計測を続け、定期的に排卵が起きていれば、ほとんど妊娠に影響はありません。しかし、体温変化にバラつきがあったり、体温に変化がなかったりする場合は、上野駅前婦人科クリニックにご相談ください。
生理不順を改善する5つのポイント
- ・食生活の改善
- ・睡眠の質の向上
- ・生活習慣の見直し
- ・基礎体温の記録
- ・婦人科での検診
女性のホルモンバランスは乱れやすく、心身のストレスや負荷がかかる生活を続けると月経不順を招きます。それでは、どうしたら乱れたホルモンバランスを元に戻せるのでしょうか?以下では、月経不順を改善するポイント5つをくわしく解説します。
食生活の改善
適量を守ればリフレッシュや息抜きになる飲酒、塩分・糖分が多い食事も、継続すると身体にとっては負荷が蓄積している状態になります。
また、添加物が多く含まれるコンビニ弁当やファストフード、インスタント麺、お菓子、ジュースは体内のミネラルを奪ってホルモンバランスを乱し、月経だけでなく、なんとなく疲れが取れない、風邪をひきやすいなどの体調面にも影響します。
過度なダイエットで必要な栄養を食事から摂取できていない場合も、月経不順を引き起こします。食事は偏りなく主食・主菜・副菜を組み合わせて食べ、不足分はナッツやフルーツなどの健康的なおやつ、サプリメントで補いましょう。
睡眠の質の向上
ホルモンの分泌には脳が大きく関係しています。自分に必要な睡眠時間をしっかりと取り、質の良い睡眠を行うために、以下を心がけましょう。
- ・就寝前のスマートフォン操作、白色・青色の強い光を避ける
- ・夕食を就寝の3時間前までに終える
- ・入浴を就寝の1.5時間前に、39~40℃程度のお湯で行う(できるだけ湯船に10~15分浸かる)
- ・就寝前のカフェイン摂取や飲酒を避け
- ・朝起きてから日光を浴びる
- ・昼寝をする場合は15分程度にする
生活習慣の見直し
心身のストレスはホルモンバランスの乱れを招くため、日々の生活リズムや習慣の見直しを行いましょう。喫煙は女性ホルモンの分泌を低下させるため、喫煙者の方には本数を抑える、もしくは禁煙を推奨しています。
生活習慣の改善はもちろん大切ですが、運動初心者が急にハードな運動を始める、昼夜逆転だった生活をいきなり元に戻すなどの大きな変化は、かえってストレスを発生させます。自分の生活リズムにあった方法で、徐々に改善をしていきましょう。
基礎体温の記録
基礎体温は、身体が安静な状態にある時の体温です。本来であれば寝ている間の体温ですが、睡眠中はご自身での計測ができないため、起きて身体を起こす前に測計します。普通の体温計でなく、より細かい0.01単位の熱の変化を計測できる「婦人体温計」を使用しましょう。
体温はホルモンバランスによって変化するため、記録表で体温の変動を見ることで、ホルモン分泌の乱れや停滞が起きている時期を確認できます。記録表はクリニック受診時にも役立ち、生活習慣の見直しにも有効です。
婦人科での検診
月経不順は、目に見える症状や痛みなどが現れないため、放置してしまう患者様が多くいらしゃいます。中でも稀発月経や過少・過短月経の方は、その状態を自覚しつつも「生理回数が少なくて快適」「生理がすぐ終わって助かる」と感じる方もいらっしゃいます。
しかし、月経不順は身体や脳が発するSOSサインです。何かしらの不調や病気が隠れている可能性が高いといえます。早めのクリニック受診で月経不順の原因を突き止め、治療が必要であればすぐに対応を行いましょう。
上野駅前婦人科クリニックは、女性のお悩みを気軽に相談いただけるレディースクリニックです。お一人で悩まず、お身体の違和感や気になることがあれば、まずは医師にご相談ください。
生理不順のよくあるご質問
- 生理周期はどうやって計算すればいいですか?
- A.月経初日(生理が始まった日)を1日目とし、次の月経が始まる前日までの日数が月経周期です。次の月経が始まったら、また1日目からカウントし直します。3周期ほど計測して平均値を出すと、より正確な月経周期が分かります。最近は、アプリやウェブ上で月経周期を計算してくれる便利なサービスも多くあるので、ご活用ください。
- 生理不順かどうかが分かりません。病院の受診タイミングはいつですか?
- A.月経予定日から1~2回程度のみ、遅れたり早まったりした場合は、急いで受診する必要はありません。ですが、月経周期の平均値(25~38日)から大きくズレが生じているケースや、3カ月以上月経がない状態であれば、クリニックを受診してください。また、通常の周期で月経が来ているけれども、強い痛みを伴う、異常に経血量が少ない、もしくは多いなどの場合も受診が必要です。
- 予定日から1週間経っているのに生理が来ず不安です。病気でしょうか?
- A.心身のストレスで、月経の開始日に1週間程度のズレが生じることは珍しくありません。月経周期が平均値の25~38日であれば、病気の可能性も低いといえます。年齢によっても月経周期は変化しますが、3カ月以上月経がない場合や、月経不順が連続している場合は、上野駅前婦人科クリニックにご相談ください。
- ピルは生理不順の治療薬になりますか?
- A.ホルモンバランスの乱れによって月経に異常が生じている場合、ピルの服用で月経不順や月経量の改善が期待できます。上野駅前婦人科クリニックでは、お一人おひとりの体質やお悩みにお応えするため、複数種類のピルを取り揃えています。月経不順でお悩みの方は、お気軽にご来院ください。
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臨時休診は11月16日・12月31日・1月1日・1月2日・1月3日・1月4日です。
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